音楽療法には、様々な効果があると言われています。実際には、どのような患者に、どういった効果があったのかについて、岐阜県音楽療法士(略称GMT)の報告の事例を、いくつか見てみたいと思います。
事故の後遺症があった身体障害者の男性は、ギターを使ったセッションで、爪を弾く指に、力が出てきたという効果があったそうです。他にも、鼻と口の両方から漏れていた息が、ホイッスルでリズムを刻む練習をすることで、コントロールできるようになり、言葉が明瞭化する、いつも怒りっぽい人が、活動中とその後は、穏やかになった、あるいは、あらゆることを拒否していた人が、音楽で揺らされることを好み、その後、人と手をつなぐことができたなど、数多くの音楽療法の効果が証明された事例が報告されています。
活動の様子から研究すると、音楽療法の対象者の性格や、人との関係のとり方が、明らかになってきました。また、人の生き方に、様々ないきさつがあり、さらに、環境にも原因があると考えられています。
自分にはできないと決めていた楽器演奏に対して、音が出てうれしいと思うと同時に、また叩いてみたいという意欲が出てきたり、音楽が嫌いと言っていた人が、ボンゴの音に「おー」という歓声をあげ、そして、引き続き、謡の一節を朗々と歌い出すというようなこともあったそうです。人前で歌を歌い、拍手を受けたといった、まんざら悪くない体験は、交流を促進するという意味で、大きな精神的支えとなったことが、継続的な活動から明らかになったと考えられています。
ふだんはあまり目立たない、おとなしい児童が、音楽の活動をしてみると、母親を始め、周囲が驚くような、さまざまな能力を表し、才能があることがわかり、その子に対する療育の姿勢が大きく変わっていったということも報告されています。
家庭で、小さい頃から、たくさんの音楽や絵本に囲まれて育った精神発達障害児は、本人の意思を表す表現は少ないかわりに、好みの音楽や楽器を利用した活動の中で、本人から周りの人へのサインが増えると言ってよいでしょう。音楽があることで、障害児と母親のスキンシップに積極性が増すということも言えるのではないでしょうか。
身近な音楽のなかで、優れた癒し効果を得ることができるもののなかには、モーツァルトがあります。実は、モーツァルトは感覚的に脳を活性化することのできる音を組み合わせた癒しの音楽を作曲することのできたとても少ない天才のひとりといわれています。モーツァルトの音楽で素晴らしいところは、脳がさえた状態であってもリラクゼーションに導くことができるということです。勉強や仕事の能率が悪くてどうしたらいいのか悩んでいるという人は、モーツァルトの音楽を聴いてみるとよいかもしれませんよ。
癒しの音楽を聴くためにはヘッドフォンとポータブルCDがあれば、いつでもどこでも音楽療法を実践することができます。ヘッドフォンを使ったほうがよいとされているのは音楽療法用に作られている高品質の音楽の場合です。もともとBGMを目的として作られている環境音楽は、ヘッドフォンで聴く必要はないようです。
音楽療法用のCDの場合にはヘッドフォンを使うことによって音楽の影響をより強く感じることができます。そのため音楽療法の効果があがるのです。耳をすっぽりと覆って雑音をシャットアウトするタイプのものをつかうとよいでしょう。耳にはめ込むタイプのヘッドフォンやイヤホンなどは音楽療法には不向きです。また雑音の入りやすいコードレスなどもあまり良いとはいえません。音楽療法をおこなうのであればなるべく質のいいものを選んだほうが良いかもしれません。
音楽で癒しを求めるということはよく言われているようですが、その時にどのような音楽を選ぶのか、そしてどのような聴き方をするかによって効果の現れ方に差が出てくるそうです。最近では、リラクゼーションを目的で音楽を聴くという人がずいぶん増えてきたようです。けれども、音楽から十分な癒しの効果を得るためには、音楽の選び方や使い方がとても大切になってくるということを知らない人のほうが多いようです。
癒し系の音楽といえば、一般的にBGMのような感じに使う方のほうが多いようですが、脳の活性効果をねらう場合は適当な音楽を流しっぱなしで聴くよりも音楽療法用のCDを選んである期間に集中して聴くことが大切のようです。脳波にはγ(ガンマ)波、β(ベータ)波、α(アルファ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波の5つの種類があり、リラックスしたい場合にはアルファ波に脳波を導くとよいでしょう。
一般に販売されている音楽療法用のCDもこのようなタイプが圧倒的に多いです。その中には、独自の方法をつかってアルファ波だけではなくてシータ波に導くものもあります。それは長く聴いているうちに脳の緊張が解けていき集中力を増進させたり、記憶力を高めるといった効果を期待することもできるといわれています。
◆5つの脳波とその性質について
・γ(ガンマ)波 30ヘルツ以上 怒りを感じていたり興奮をしているとき
・β(ベータ)波 14~30ヘルツ 緊張していたり警戒しているとき
・α(アルファ)波 8~14ヘルツ リラックスしているとき、集中しているとき
・θ(シータ)波 4~8ヘルツ 浅い睡りの状態のとき、瞑想しているとき
・δ(デルタ)波 0.5~4ヘルツ 深い睡眠に入っているときや無意識の状態
認知症を緩和するケア方法というものがあります。その中に音楽療法などがあり、定期的におこなっているところもあります。音楽療法の先生がピアノ演奏などをおこなって老人ホームなどに入居されているかたが音楽を楽しむというスタイルです。
音楽療法は音楽の先生と精神科の先生が協力することによってできる療法で、音楽の先生のピアノの演奏にあわせて懐かしい歌を歌ったりすることもできます。また歌にあわせてボールでたのしんだり打楽器をつかってリズムをとったりするというプログラムです。音楽やリズムをつかって記憶をよみがえらせるといった効果もあるそうです。
また、音楽療法に参加する入居者のかたたちが一緒に体験することによって仲間意識などもうまれてきます。普段よりもコミュニケーションが取りやすくなるのではないでしょうか。何度か体験していくうちに明るい表情で楽しんでいる様子もわかってくるようです。リズム感も養われますので音楽療法が楽しくなってきますよね。
他にもスウェーデンの音楽療法の専門家をまねいた音楽療法のプログラムなども開催されることがあります。専門家のかたはステン・ブンネ氏で、独自の手法をもって開発された音楽療法をつかっており音楽療法の分野では第一人者のようです。ブンネ法とよばれる音楽療法は基本的な人間が持つ能力や昨日を保持したり促進させたりする効果があります。